琵琶湖 沖島
/ 近畿/ 滋賀県
京都への出張を終えた週末、機会を得て琵琶湖 沖島へと足を延ばした。近江八幡の堀切港から渡し船に乗ること約十分。琵琶湖の水面を渡った先に、日本で唯一、淡水湖の中に人が暮らす島がある。
島には車も信号もない。細い路地に沿って民家が肩を寄せ合い、移動には三輪自転車が使われている。古くは保元・平治の乱を逃れた落武者が漂着してこの地に根を張り、戦国時代には織田信長から専用漁場を与えられた。琵琶湖の漁業を生業として生き続けてきた人々の時間が、今もこの島には静かに流れている。
四方を水に囲まれた孤絶の中に、確かな生活の気配があった。係留された小舟、路地に佇む猫、どこかから漂う暮らしの匂い。漁業の島でありながら、これまで訪れてきた漁村とはどこか異なる空気が漂っていた。潮の香りがなく、波音も穏やかで、潮風に晒された荒々しさがない。海ではなく湖で生きてきた人々の暮らしは、同じ漁村でありながら、静けさの質がどこか違う。それは淡水という環境が、長い時間をかけてこの島の風景と人の気配に刻んできたものなのかもしれない。
湖上に浮かぶという隔たりが、沖島には独自の時間をつくり出してきた。渡ってきた水面を振り返りながら、そのことをあらためて感じた。