沈黙のかたち
/ landscape
日本の山間部に訪れる冬は、時に2メートルを超える雪で大地を覆い尽くします。積もった雪はやがて根雪となり、その冷たく重たい白は、草木や枝、日常の痕跡さえも沈黙の中に封じ込めていきます。自然の力は、あらゆるものの輪郭を曖昧にしながらも、その存在を確かに包み込み、形を記憶し続けます。そして春。四月の光が差し始める頃、長い眠りのような季節の幕が静かに開かれます。溶けた雪の下から現れるものたちは、ただそこに在っただけのものではなく、季節を越えて耐え、そして今、目覚めようとするもののように映ります。
『沈黙のかたち』は、雪の下で眠っていたものたちが、春の光を受けて姿を現す瞬間を記録した作品です。モノクロームの表現は、色彩ではなく、かたちと陰影によって、冬と春の境界を描き出しています。これは、凍てつく季節の記憶と、あたたかな季節への微かな予感。そのはざまで静かに息づく、自然と時の詩を綴る試みです。